製薬企業で前向きレジストリー研究を行うメリット

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製薬企業において前向きレジストリー研究の需要は著しく高いです。

データの二次利用が流行っていること、製薬企業による小規模レジストリーの乱立の社会問題化などにより、以前よりブームに陰りがあるものの、疾患領域によっては依然需要が高いです。

製薬企業、特にメディカルアフェアーズに求められる大きな役割としてはデータジェネレーションがあります。

今回、元臨床医のメディカルアフェアーズ視点でレジストリー研究が製薬企業においてなぜ好まれるのかということについて、ビジネス面、コスト面、科学的要素の3つの視点でまとめてみます。

この記事は、製薬企業の思惑を理解したい医療従事者の方、製薬企業内でデータジェネレーションに興味があるかたのために記載しました。

デメリットの部分も多々あるので、それは別記事にまとめます。

ビジネス的な要素

医師とのエンゲージメントが高まる

エンゲージメントについてはレジストリー特有というよりは、前向き試験全般の話です。

前向き試験を行うと、医師とのエンゲージメントが高まります。

強いつながりを持つことをエンゲージメントと言います。

医師とのエンゲージメントは製薬企業において最も重要な要素の一つです。

製薬企業は患者さんから直接情報を取ることができないとされているため、処方を行う医師との接点が重要になるのです。

メディカルアフェアーズが対象とするキーオピニオンリーダー(KOL)の多くは、 臨床研究をしたいと思っています。

彼らのニーズを満たすことで、エンゲージメントが高まります。

データベース研究という手もありますが、新規性が出しづらいということ、やった感じが少ないということからレジストリー研究を含む前向き試験の方がエンゲージメントが高まります。

結果、製品の上市後の講演会で、前向き研究で得られたデータを話ししてくれるようになります。

薬剤の上市前から始められる

製品の上市前から活動を始められるということも大きなメリットです

レジストリ研究は観察研究なので必ずしも新製品のデータが最初から入っている必要はありません。

試験期間が十分長いのであれば、上市前から情報を貯めておくということも可能です。

上市前から行うことのメリットは計り知れません。

近年では パテントが切れた後では利益があげづらい構造になっています。

上市直後から活動を最大化させることが求められています。

したがって、研究は製品のない中でも始められるレジストリ研究は重宝されます。

コスト的な要素

RCTよりも費用が安い

費用についてはRCTに比較すると安いです。

検証的なリサーチクエッションについて、本来はRCTを行います。

しかしながら、近年では観察研究の結果でも類推できる手法も開発されています。

資材化できる要件も広がっており、疑似RCTと呼ばれる手法を用いれば資材に用いることができます。

薬剤の効果についてもレジストリー研究で報告され、資材でも活用されるようになりました。

したがって、RCTの対立候補として、安い費用で薬剤の有効性を示すデータになりうると認識されることが多いです。

RCTよりも手軽にできる

臨床研究法が制定されてからRCTのハードルが高くなりました。

侵襲の少ない観察研究、つまり通常のレジストリー研究は臨床研究法の定める臨床研究ではないとされました。

臨床研究法の施行等に関するQ&A、問1-11より

したがって、レジストリー研究を行う際には 倫理指針に従う通常の臨床研究として扱うことができます。

認定臨床研究審査委員会(CRB)と言われる臨床研究法下の臨床研究のための倫理委員会を通す必要がありません。

CRB のプロセスは通常は 半年程度かかります。

また、医師にも大きな労力がかかるので、なかなか進まないことがあります。

通常の倫理委員会ですむというところで、手軽に行うことができます。

科学的な要素

登録症例数が多く、継続的なニュースフローとなる

営業部門に訪問する理由を作るという意味合いでも継続的なニュースフローは重要です。

理由がないと、訪問を受け入れていない医療機関が多いからです。

レジストリー研究はRCTと比較して、症例数が多いという特徴があります。

したがって、レジストリー研究のデータを使用して、色々な切り口を持つことで継続してデータ創出をすることができます。

特に重要なのが、製品の有効性です。

第三相試験において明らかに有効性が示されている薬剤の場合は、さらに有効性を見るような研究を行うことが倫理的に難しいことがあります。

比較群に入ってしまった患者さんに不利益が生じるからです。

そういった際にレジストリー研究は役立ちます。

観察研究なので、特に患者さんの不利益にならないからです。

また、症例数が多いので、様々な切り口で有効性を見ることができます。

こういった情報が定期的なニュースフロートなりえるのです。

データベース研究では取ることができないデータがとれる(QoLとか)

データベース研究との比較という点ですが、ほしいデータを取ることができます。

一般的なデータベース、MDVやJMDCのデータベースでは取ることができなような項目を対象とすることができます。

よくある需要としてはQoLのデータがあります。

高齢化の進んでいる現在、こういったデータは重要です。

患者さん、医師の死生観が変わってきており、QoLを重視するようになってきているからです。

通常のデータベースには QOL のデータが入っていないません。

したがって、前向き試験で最初からこういったデータが取れるように計画するということは大きなメリットになります。

また、製品の有効性もさることながらアンメットメディカルニーズの同定にも繋がります。

QOL で苦しんでいる患者様がいるということが示され、既存治療では十分でないことが明確になるからです。

こういったデータは資材や講演会での根本のデータになりえるので非常に重要です。

他にも、治療を強化すべき患者さんの同定に繋がるようなマーカーを入れてられる点も重要です。

なぜなら医師がその薬剤を使うというときに治療すべき患者さんを同定しやすくなるからです。

脆弱性が高い患者のデータ

RCTに入らないような脆弱性の高い患者も組み入れられるというのもメリットです。

例えば、高齢者や腎機能低下症例などがあげられます。

こういった症例は、安全性の懸念からRCTに入れることが倫理的に難しいです。

したがって、観察研究であるレジストリー研究は脆弱性の高い患者さんに対して示すことができる最も質の高いデータということになります。

高齢化の進んでいる日本において、脆弱性の高い患者さんにたいしてのデータが求められることも多いです。

想定される患者層によっては、前向きレジストリーは検討すべきデザインといえます。

リサーチクエッションが明確でなくても試験を始めることができる

レジストリー研究の場合はリサーチクエスチョンが明確ではなく始まることがあります。

本来はリサーチクエスチョンを 明確にした後にそれに見合ったデザインを考えるのが重要です。

しかしながらレジストリー研究の場合は、実情を知るというあらいクリニカルクエスチョンで始まってしまうことが多いように思います。

仮説検証型の研究ではないので、RCTよりは許容される面が強いです。

リサーチクエッションを明確化するというのは大変な作業です。

MSL活動から得られたインサイトを収集して分析し、適切なリサーチクエッションを考える必用があるからです。

私もRCTのネタ探しに1年間かけて、結局見つからなかったこともあります。

レジストリー研究であれば、リサーチクエッションが明確でなくとも、なにかしらの結果がでるので、そういった労力やリスクが回避できます。

製薬企業にとって、始めやすく、そこそこインパクトのある研究ということで、前向きレジストリー研究はこのまれます。

まとめ

製薬企業のデータ創出の手法として前向き研究は有効な手法です。

ビジネス面、コスト面、科学的要素といった観点でメリットがあるからです。

ずぼら@元医師

ずぼら@元医師

製薬企業勤務、元医師

40代前半、2児の父。臨床医10年後に外資系製薬企業に就職。メディカルアフェアーズ所属。臨床医時代は臨床病院メイン。
メディカルアフェアーズメインの製薬企業情報、英語について情報発信。
今後、医療のDXが進むといいなぁ。
好きな言葉:効率がいい。楽。
課題:英語 (VERSANT 55点)

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