製薬企業で働く医師って何やってるの?って疑問に今回はお答えします。
私は転職前にエージェントの話を聞いてもよくわからなかったです。
また、聞いた話と業務内容が違うと感じました。
エージェントは、実際に製薬企業で働いてきたわけでも、一緒に業務をしたわけでもないので当然です。
実際に製薬企業に勤めている人間でないとわかりません。
この記事では、医師に対して需要の高い5つの役割について説明します。
実際にはどの部門がどの仕事を行っているかは企業により異なるので、エージェントに対して何をしたいかを伝えることが重要です。
目次
臨床開発
新薬の開発に携わるポジションです。
一般的な製薬企業のイメージどおりですね。
Phase 1 – Phase 3 + (安全性調査) が業務となります。
日本においてはPhase 2、Phase 3がメインです。
規制が厳しく、細かい知識が必用なため、業務はかなり細分化されています。
開発はGlobal戦略と強く結びついているので、海外出張・転勤の可能性が高いです。
英語の能力が最も必用とされる部署となります。
エージェントの話では、『臨床』と名がつくので、医師からの人気が一番高いポジションということです。
業務量は時期により大きく異なり、製品の上市に合わせて負荷が変わります。
医師の需要としては、プロジェクトリードと専門家としてアドバイスをする立場とに別れます。
海外留学から帰国する際に、日常臨床に戻ることに疑問を感じる先生がこの部門に入ることが多いように思います。
他にも、厚生労働省で薬剤の審査を行う部門で勤務をしていた方なども多いです。
安全性
製品の安全性報告に関する部門です。
製薬企業に来るまであまり認識していなかったのですが、製薬企業内では非常に重要な部門になります。
安全性部門に勤めていなくても、毎月のように安全性報告についてのトレーニングを受けることになります。
医師のに対しては、個別の安全性報告に適切に対応することが期待されます。
製薬企業の職員は製品知識があって、有害事象報告からどの程度重大なのかの判断ができません。
その点、臨床経験のある医師であれば適切に判断できます。
開発部門とも関わりますが、開発段階で安全性調査を計画する必用があり、データ創出に関連することもあります。
臨床に一番近い職種なので、製薬企業に入る際には最も違和感なく始められる部署です。
メディカルアフェアーズ
新薬の上市前後の戦略を練るポジションになります。
間違いなく医師の需要No.1です。
海外では同部門の職員は医師ばかりです。
パテント切れが意識されるようになり、新薬の上市を成功させることが製薬企業の課題となっていて、特にGlobal企業で存在感が高いです。
Unmet medical needsと言われる現状の医療における満たされていない需要を探すことが求められます。
教授クラス (特に学会理事クラス) と話をして、どのように新薬を育てていくか、どのようなエビデンスが必用か?ということを議論します。
医師と話をする機会が多いとはいえ、薬剤の効果を最大化することが目的であり、薬剤の売上が重視されるわけではありません。
接待はありません。
Unmet medical needsに対して新薬がどのように答えるのかを明確にすることが仕事です。
日本においてメディカルアフェアーズの歴史が浅く、何をするかは年々変わっていっています。
医師の需要が高い仕事としては
- 新薬の上市前後の戦略立案
- データ創出
- 医師とのDiscussion
- 疾患啓発を含む講演会
などがあります。
データ創出の需要が増えてきており、Phase 4 study、Real world evidenceなどのデータ創出の経験が得られます。
経験がないことで躊躇するかもしれませんが、就職後にトレーニングを受ける機会があるのでご安心ください。
医師の需要が高いのですが、業務範囲が定まっていない印象もあり、安全性や開発のあとにメディカルアフェアーズをやるのもいいかもしれません。
営業
一般的には営業は医師の仕事として転職エージェントから明記されることはないですが、実際にはがあります。
とはいえ、MRをするわけではないのでご安心ください。
営業戦略を立てる、営業資材を作成するなどが業務になります。
営業戦略の中には、どのような媒体(新聞・テレビ・インターネット)で疾患啓発を行うか?どのぐらいの人員を配置するか?など、臨床医では絶対に経験できないようなことを経験できます。
製薬企業の予算として、かなり大きい部分を占めることになりますので、やりがいは非常に高いです。
営業については、製薬企業のトレンドなどを抑えている必用があるため、臨床医から直接営業という就職はかなりハードルが高いです。
海外も含めてみるとコンサル、MBAを経てから営業に行く医師が多いように思います。
Patient access
エージェントからあまり勧められないですが、Patient accessも医師の仕事として適正が高いです。
Patient accessは患者さんの医療へのアクセスについての問題点を探り、解決する職種です。
新薬が開発されても、
- 使用されるまでに時間がかかる
- 10年たっても本当に必用な人の半分にも届いていない
- パテントが切れたあとの収益がほとんど期待できない
などのことがわかっており、この解決に対して期待される部署です。
近年ではデジタル化によるPatient support programと合わせてやれる範囲が広がっています。
しかしながら、企業側に医師の仕事という認識が低く、給与レンジが低いので製薬企業勤務の医師の仕事としてあまり勧められていません。
現状、外部コンサルの言いなりになっています。
コンサル、またはベンチャーに就職して、製薬企業を支援するような取り組みのほうが活躍できるかもしれません。
将来性
どの部門も需要は変わっていますが、医師の需要は当面かわらないでしょう。
通常は部長クラスになるのにPh.Dが必用になるのですが、医師の場合はPh.Dがなくとも部長以上のポジションに付くことができます。
製品の名前を連呼して、接待を行えば売れる時代ではなくなりました。
どの部門であっても、患者さんとコミュニケーションをとった経験、学術的な深さにより、医師の需要は盤石なものになります。
『製品の価値にサイエンスでアドレスする』という姿勢が重要視されています。
本当に、普通の社員と全然ちがいますよ。
まとめ
- 医師の需要の高い部門は開発・安全性・メディカルアフェアーズである。
- 実はこの3部門以外にも営業・Patient accessなどにも需要がある。
- 製薬企業における医師の需要は盤石である。